「概念化力を身に付ける目的とは何か?」 問題が複雑すぎて議論すらできない状況を思い浮かべてほしい

前回のブログで書いたように、私は10年の歳月をかけて“概念化”を再定義しました。
概念とは…
“同類とみなされる複雑な物事や状況を俯瞰的に捉え、そこにある外見上の特徴のみならず中身のメカニズムや構成要素の関係性に着目することで、共通部分を普遍的かつ大雑把に表現したもの”
私は以前にも概念化を定義したことがありましたが、それは不完全なものでした。
今回の定義は私の思いに完全にフィットしました。
それは同時に、私のお客様たちの納得感にもつながりました。彼らの顔の輝きは、リモート会議のパソコンの画面を通して感じ取れるほどでした。
そんな時、私は間を置かずにこんな質問をします。
「私たちはなぜ概念化するのでしょうか?」
「私たちはなぜ概念化を身に付けなければならないのでしょうか?」
私の答えはこうです。
概念化の目的は…
複雑すぎるがゆえに頭の中で検討したり他人と議論したりすることが困難な物事や状況に対して、これらを俯瞰的に捉え、中身のメカニズムや構成要素の関係性を大雑把に表現することで(=構造化することで)検討したり議論したりできる状況を生み出すことである
ビジネスや社会が加速度的に複雑化する時代にあって課題解決に取り組むためには、すべてを万遍なく扱うのではなく、本質に着目することが欠かせなくなっています。ところが、物事や状況を漠然と眺めていただけでは本質を見極めることはできません。
本質を見極めるためには、事前の準備として概念化が欠かせないのです。
私たちは、複雑な物事や状況の本質を見極めて効果的かつ効率的に対処できるようになるために、概念化力を身につけなければならないのです。
私たちが概念化力を身に付ける目的は…
ビジネスの成功のカギは本質を見抜くことであり、そのためには頭の整理や議論が欠かせない。私たちは概念化力を身に付けて複雑なビジネス環境を概念化して表現し、これを題材に頭の中を整理し、議論しなければならない
ビジネスを成功させるには概念化が欠かせない。
ビジネスを成功したいなら、もしくは概念化力を持たない閃きだけのビジネスカリスマたちを成功に導きたいなら、皆さんは概念化できる人でなければならない。
これは私の信念です。信念に従い、私はさまざまなビジネスの議論を概念モデルに落とし込みます。
“概念モデル”とは“概念”を図表に表現したものです。私は概念モデルを駆使して議論を活性化し、議論の参加者たちを本質へと誘います。
概念モデルとは…
“同類とみなされる複雑な物事や状況を俯瞰的に捉え、そこにある外見上の特徴のみならず中身のメカニズムや構成要素の関係性を普遍的かつ大雑把に表現した図表”
私は以前に、ディスカッションマテリアルが議論を活性化し、ビジネスを成功に導くという記事を書きました。
概念モデルは、ディスカッションマテリアルの最も大切な構成要素です。
“概念モデル”を使いこなし、言葉だけでは曖昧になりやすい“概念”をカタチある図表に落とし込むことで、私たちは、ぼんやりとしがちな概念的な議論を格段に際立たせることができるというわけです。
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「概念化とは何か?」概念化の再定義 抽象化は見た目だが概念化は中身のロジックに切り込む

“正解のない問題を解く力”は、2018年7月から2019年9月にかけて59回に渡って連載した概念化力に関するブログです。このブログの中で、私は「概念化とは何か?」「本質とは何か?」についてさまざまな角度から切り込みました。
あれから2年、私は“計画の技術”というブログにかかりっきりでした。
そんな私が今回は、いったん終了したこのブログに新たな記事をアップします。
その理由は、新しい概念化論にあります。
月日は流れ、改めて概念化という極めて曖昧なテーマと向き合う中で、私の中では以前よりも進化した概念化論が生まれました。
自分の中だけに留めておけなくなった私は、ブログを通じて、刷新された概念化論を皆さまにお披露目することにしたわけです。
今回は、過去の定義を振り返ることはしません。
なぜなら、全く新しい定義としてお伝えした方が、このブログを読んでおられる皆さんには伝わりやすいと考えたからです。
過去に私が展開していた概念化論が気になる方は、以下のバックナンバーをクリックしてください。
では始めましょう。
「概念とは何か?」
疑問を感じた人の多くはネットで「概念化」をキーワード検索することでしょう。
私もそうしました。
“概念とは同類のものから共通部分を抜き出し、それらを組み合わせて普遍的かつ大まかに表現したもの”
これがネット上の答えでした。
しかしこれは“概念”ではなく“抽象”の説明にしかなっていません。
実際、概念化と抽象化は混同して使われることが多く、これが概念にまつわる混乱に拍車をかける結果となっています。
しかし、これを逆手に取れば、概念化と抽象化の違いを明らかにすることは概念化の理解につながります。両者の違いを明らかにすることで、概念化の定義を鮮明に浮き上がらせることができるわけです。
私は次のことに気付きました。
抽象化と概念化の共通点は…
同類とみなされる複雑な物事や状況を俯瞰的に捉え、共通部分を普遍的かつ大雑把に表現するという点にある
抽象化と概念化の相違点は…
抽象化は“外見上の特徴”を普遍的かつ大雑把に表現するだけなのに対し、概念化は“中身のメカニズムや構成要素の関係性”を普遍的かつ大雑把に表現する
これは私にとって大発見でした。
この発見に導かれ、私は“概念”を以下のように定義しました。
概念とは…
同類とみなされる複雑な物事や状況を俯瞰的に捉え、そこにある外見上の特徴のみならず中身のメカニズムや構成要素の関係性に着目することで、共通部分を普遍的かつ大雑把に表現したものである
これが、10年という長い道のりの末に辿り着いた“概念”の定義です。この定義が、概念化とビジネスの関係性をはっきりと浮かび上がらせてくれます。
皆さんの周りにあるビジネスやビジネス環境を振り返ってみてください。
非常に多くの要素が重なり合い、つながり合い、複雑なこと極まりないはずです。外見上は同じように見えても、一歩その中に入ると、顧客やステークホルダー、提供価値と価値特性、コアコンピテンシー、サプライチェーンやチャネル、Make or buy、環境問題、サプライチェーンなどのさまざまな要素が複雑に絡み合っているではないですか。ありのままを受け入れようにも、私たちにはその術がありませんでした。
そんな中で私が手に入れた唯一の手段が概念化です。
複雑な物事を、そのメカニズムから普遍的かつ大雑把に表現できる概念化の技術を使えば、私たちは、捉えどころのないビジネス環境を手の届くところまで引きずり下ろし、その本質を維持したままで、手を触れることのできるカタチにまでシンプル化できるわけです。
つまり概念化は、ビジネス上の“正解のない問題”を解くためのカギとなるのです。
コンサルタントである私が概念化にこだわる理由がここにあります。
次回は、概念化の目的、概念化力を身に付ける目的について整理していきます。
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[最終回] 概念化力の強化に取り組むなら、書籍の内容を概念化することから始めればいい
皆さん、ブログ「正解のない問題を解くための力」をご愛読いただき、ありがとうございました。このブログも、今回が最後となります。
そこで今回は、皆さんが「正解のない問題を解くための力」=「概念化力」を身に付け、高め続けるためのお手軽な方法を紹介して締めたいと思います。
概念化力を強化するには基本を理解することが大切です。
- 概念化の目的は何か?
- 概念化とは何か?
- 概念化はどんなシーンで必要なのか?
- 概念化はどうやればいいのか?
概念化力を高めたいなら、概念化や概念化手法の基本を理解した上で、自分の経験や自分なりのアイディアをそこに当てはめられるようになることが大切です。これを何度も繰り返しているうちに概念化力は向上し、いつしか、皆さんなりの概念化理論ができ上るはずです。
ところが、これが簡単ではありません。そこに高い壁があるのです。
職場で重責を担い、時間に追われている皆さんにとって、仕事中に概念化を試みる機会はどれほどあるでしょうか。ビジネスの現場を概念化力鍛錬の場として利用するには限界があります。
私は特定のお客様を対象に概念化力講座を提供していますが、このような有料講座は皆さんにとって身近な存在ではないはずです。
そこで今回は、概念化力強化の秘策を伝授しましょう。
「書籍の内容を概念化する」
これが秘策です。
順を追って解説します。
概念化の最初の作業は、散在するキーワードを拾い集めることでした。
キーワードは、このような場所に潜んでいます。
ところが残念なことに「会議の席での発言」「上司や有識者からのアドバイス」「顧客や市場関係者の発言」などには難しさがあります。メモをとっておかなければすぐに忘れてしまいますが、議論の場であるはずの会議の席で、あるいは上司やお客様と真剣に話をしている最中に、メモをとることに熱中しているわけにはいきません。これらの時間は、後日の概念化訓練に備えてキーワードをとりためるための場というよりは、むしろ、身に付けた概念化力を鍛え上げるための実践の場として絶好なはずです。
それに引き換え、書籍は便利です。逃げません。何度でも読み返すことができます。1度読んで全体を理解し、2度目に読み直してキーワードを拾い、3度目に読み直してキーワードの相互関係を理解するといったこともできます。
まずは書籍の内容を数枚のスライドにまとめ、それを仲間に説明してみてください。概念化がうまくいき、本質を見抜いていれば、仲間はきっとあなたの説明に共感してくれることでしょう。
この程度なら、明日からでも始められます。
私は以前に、クレイトン・クリステンセンの著書「イノベーションへの解(翔泳社)」の内容をスライド1枚に概念化し、仲間とその本質について議論しました。その後、このスライドは多くのお客様の心に刺さり、いまだに活用頻度の高いスライドのひとつとなっています。
まずは愛読書を開き、キーワードの拾い出しからスタートしてみてはいかがでしょうか。
さて、冒頭で書きましたが、このブログも今回が最後となりました。
そんなわけで、私のほうでは次の仕込みを始めています。
次のテーマは「計画力」です。
私は2013年に計画の本(「実行に効く」計画の技術)を著しました。
あれから6年、私は計画力で多くのお客様の課題を解決し、お客様の計画力向上にお役に立ってきました。
そんな私がいま、改めて、自ら著した本を振り返ります。
目的は、計画の技術を以前よりもわかり易く、整理されたカタチで皆さまにお届けすることです。
ビジネスシーンでは、「概念化」よりもさらに身近なのが「計画力」です。
計画力は概念化力の代表選手でもあります。
始まるまでに少しのインターバルをいただくことになるかもしれませんが、ご期待ください。
浦 正樹
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プロセスを細かく書き過ぎることなく、行動規範で定着を促す
私たち日本人は、何かにつけ、緻密にルールを決めたがります。
プロセス定義も同じです。
特にエンジニア気質の人は、何でもかんでも見境なくプロセスに突っ込む傾向があります。その結果、巨大化したプロセスは利用されません。
プロセスは、サイクルに置き換えることで定着しやすくなります。ところが、大規模で複雑なプロセスをサイクルで完全に表現するには、サイクルの定義が何階層にも及んでしまいます。
別建てのプロセス定義ドキュメントに切り出してもいいのですが、所詮、複雑すぎる定義書が読まれることはありません。
ならばとばかりにプロセスの減量に取り組んだとしても、これが一筋縄ではいきません。
そこで今回は、その一助になればと筆を執りました。
実は、行動規範をうまく定義してプロセスの外堀を埋めれば、プロセスの記述は少なくてすみます。
ピンとこない方のために、行動規範の例を挙げておきましょう。
- 自分で責任をとれる範囲は各人が判断する。
- 自分の手に負えないときは、抱え込まずに上司に判断を仰ぐ。
- 計画を立ててから行動すし、計画は立てっぱなしない。
- 積極的に権限委譲するが、権限委譲した後は任せっぱなしにしない。
- できない約束はせず、約束したことには責任を持つ。
- 取引先とは対等な立場で付き合う。
- 上司は部下の自己実現に責任を持つ。
以前にこんなことがありました。
私は、プロジェクト型で事業運営する組織からプロジェクトマネジメント力強化の仕事をいただきました。ここのプロジェクトはどれも大型で複雑でしたが、プロジェクト運営は属人的でした。
はじめは複雑な仕組みをトップダウンで導入しようとしましたが、うまくいきませんでした。組織のガバナンスが脆弱で、トップダウンはまったく効かなかったからです。
そこで私は、文化や価値観、働き方などといった組織の基礎づくりを優先させることを提案しました。ボトムアップである程度の成熟度に達したら、トップダウンも効くはずだと考えたからです。
私は、ごくシンプルな行動規範を「プロジェクトマネジメントの基本行動」として定めました。
- 毎週、進捗会議を開催する。
- 作業ごとに「始めたか」「終わったか」「いつ始めるか」「いつ終わるか」を確認する。 始められない、終われない場合は理由を確認し、対応策を検討する。
- プロジェクト計画を更新、再計画する。
- 計画に合意し、会議を解散する。
- 計画に沿って、 1 週間、作業をする 。
基本行動を速やかに定着させるには、口で諭してもダメです。そこで、マイクロソフトのプロジェクトマネジメント支援ツール(Microsoft Project)を利用することにしました。頭ではなく、行動(=操作)と身体で覚えさせようと考えたのです。「教育」ではなく「躾(しつけ)」です。
これが図に当たり、プロジェクトマネジメントの基本行動は組織内に広がりました。
このように、行動規範を徹底すればプロセスの詳細度は抑えられ、脚注の但し書きを減らすこともできます。これはプロセスに限った話ではありません。制度やルールにはもっと効きます。
行動規範は息が長いのが特徴で、プロセスや制度・ルールのような頻繁で更新してはいけません。行動規範やこれに込められた熱い思いは時間の経過とともに組織内部に浸透し、価値観と結びつき、文化となって脈々と受け継がれます。
皆さんも、これをヒントに、ぜひ工夫してみてください。
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定着を期待するなら、プロセスよりもサイクルを意識しよう
業務改革には「プロセス」の議論は欠かせません。
これは、プロジェクトマネジメントプロセスの改革に取り組んでいたときの話です。
お客様が書き上げたのは、緻密なマネジメントプロセスの山でした。パワーポイントのスライド上に表現されたプロセスマップは100枚を優に超える膨大なものでした。
プロセス定義は、定義する側と活用する側に大きなギャップがあります。定義する側は、想定しうるすべてケースで漏れが無いように、曖昧さにも配慮して厳格に書きたがります。それが自分の責務だと考え、責務を全うするわけです。
ところが活用する側は、複雑すぎるプロセスマップを前にすると気分が引いてしまいます。山と盛られたプロセスをひとつひとつ確認するようなことはしません。こんな状況では、プロセス遵守のモチベーションなど高まるはずもありません。
大切なのは「定義」ではなく「定着」です。定着しなければ、時間をかけた改革も水泡に帰してしまいます。そのためには、シンプルでなければなりません。重要なポイントや実行上のキーワードが頭に残る程度のシンプルさが理想です。
何をやるにも、その都度、プロセスマップを確認しなければならないような状況では、プロセスは定着するはずありません。
そこで私は、マネジメントをプロセスではなく「サイクル」として捉えることにしています。マネジメントプロセスではなく「マネジメントサイクル」です。
プロジェクトマネジメントにおけるマネジメントサイクルには、いくつかの段階があります。
例を挙げてみましょう。
- ウィークリーに行う、プロジェクトレベルのマネジメントサイクル
- バイ・ウィークリーに行う、プログラムレベルのマネジメントサイクル
- マンスリーに行う、経営幹部によるマネジメントサイクル
「1」のマネジメントサイクルは、プロジェクトチーム内で閉じています。 例えば毎週金曜日の午前中にプロジェクトメンバーは作業実績を報告します。その夕方にはプロジェクトチーム内で会議を開催し、計画と実績とのギャップを分析します。その後、ギャップを受け入れた上で計画を更新し、全員が合意した時点で会議はお開きです。月曜日の午前中、メンバーは新しい計画をもとにその週の詳細な活動計画を作成します。
「2」のマネジメントサイクルは、プログラムチーム内で閉じています。プロジェクトマネジメントチームがプログラムマネジメントチームに対して情報発信し、その情報を参加者全員で議論します。これには、プロジェクト内では解決できなかった問題なども含まれます。 例えば、隔週月曜日の午前中に、プログラムマネジメントチームとプロジェクトマネジメントチームが会議を開催し、最新の計画や新たに発生した問題、リスクの状況などを共有します。プログラムマネジメントチームはプロジェクト横断的な観点から状況を判断し、アドバイスします。場合によっては、問題解決に向けた行動を起こすこともあります。プロジェクトマネジメントチームは結果をプロジェクトに持ち帰り、必要に応じて臨時会議を開催し、プロジェクト内に指示の徹底を図ります。
「3」のマネジメントサイクルは、経営幹部のレビューを目的に組織レベルで開催します。 幹部はその場で状況を判断し、意思決定します。経営幹部から直々に与えられた指示は、その場に参加していたライン部門やスタッフ部門のトップ、プログラムマネジメントチームやプロジェクトマネジメントチームを動かします。達成状況は1カ月後を待つことなく、ダッシュボードシステム(KPIやアクションアイテムの進捗状況などを組織内で共有するためのITツール)などを通じて幹部のもとへと届けられます。
プロセスとサイクルの違いは「馴染みやすさ」にあります。
これを強調するために、私はさたなる工夫をしています。「サイクル」ではなく「リズム」と呼ぶのです。これによって「マネジメントサイクル」は「マネジメントのリズム」に変わります。
サイクルとリズムの基本は同じですが、受ける印象が違います。
カラダのリズムや生活のリズムという言葉があるように、「リズム」という言葉は生命活動をイメージさせます。このイメージが大切なのです。
リズムにしたときの馴染みやすは格別です。「サイクル」を「リズム」に読み変えるだけで、時間の経過とともに忘れ去られてしまうリスクは大幅に低下します。
リズムが組織に浸透し、事業活動の背骨となって組織の生命活動を支えるのです。
++++++++ ヒント ++++++++
サイクルとリズムに敢えて違いを見つけるなら、リズムは一筆書きが基本です。
先ほどの「ウィークリー」「バイ・ウィークリー」「マンスリー」などのようにサイクルが枝分かれしている場合は、それぞれを分離して定義しましょう。それぞれが一筆書きになることでリズムとしても馴染みやすさが際立ってきます。
私が勤めていたグローバル企業には「リズム・オブ・ビジネス」がありました。1年間を通じて実行される事業管理のプロセスを、階層別に独立したリズムで表現したものです。象徴的に描かれた最上位のリズムはシンプルそのもので、ポスターとなってオフィスのそこかしこに貼られていました。
最下位のリズムには社員ひとりひとりの活動が埋め込まれています。要領の悪い私ですら、施行初年度から馴染むことができました。
私はこの表現を拝借して、プロジェクトマネジメントサイクルのことを「リズム・オブ・プロジェクト」と呼んでいますが、評判は上々です。
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「まずは絵にしろ」と言われたとき、あなたはどんな絵を描きますか?
「まずは分かりやすい絵にしてくれないか」
これは上司が部下に対してよく口にするセリフです。
ビジネスでスピード感が重視されるに連れ、現場では長い文章は敬遠されるようになり、ひと目でわかる「絵」が求められるようになりました。Microsoft PowerPoint(マイクロソフトが提供するプレゼンテーション用のアプリケーションソフト)の登場が、この状況に拍車を掛けました。
「絵にする」という言葉を真に受ければ、文字通り「説明の文章をそのまま図表に落とし込む」という意味になります。ところが最近になって、私はこの「絵にする」という言葉に2つの受け止め方があることに気付きました。
- 文脈に沿って文章を忠実に絵にする
- 文章で書かれた内容をいったん飲み込み、それを概念に落とし込む
「1」は言わば「お絵描き」です。「長々とした文章で書かれるよりは、それが絵になっていたほうがわかりやすい」というわけです。「直観的に理解できる」という意味で価値はありますが、それ以上の意味はありません。
上司に「絵にしろ」と言われて皆さんが考えることはこれに近いはずです。私もかつてはそうでした。
PowerPointを手にしたとき、私も「お絵描き」に夢中になりました。うまく「お絵描き」できれば褒められるので、いい気になったこともありました。お恥ずかしいことに、ビジネスコンサルタントとして働き始めたころは、まだこんな感じでした。
これに対して「2」は概念化です。
「概念化」というテーマと向き合うようになったある日のこと、私は「絵にする」という言葉
に「2」の意味があることに気付き、その瞬間に頭の中で何かが「パン!」と弾けました。それはまさに私が新境地を手に入れた瞬間であり、「絵にする」という言葉に「本質を追求する」という新しい価値が加わった瞬間でした。
以前に書きましたが、本質を追求するには、その前段階として概念化が欠かせません。描き出された概念(=概念モデル)には本質に至るヒントが隠れています。
今の私は「1」と「2」を使い分けています。
「1」も「2」も、構造化の基本モデル(ツリー型、マトリックス型、フロー型)を使うという点で同じですが、強いメッセージを伝えたいときや頭に描いている思考ロジックを相手に間違いなく伝えたいときは「1」でうまくお絵描きします。
「1」の例としては業務プロセスや情報フロー、情報の因果関係や結論に至るまでの思考の流れ、組織表や役割分担などがあります。
これに対して、全体像を共有し目線を上げて皆で議論したいときや共感を促したいときは「2」で概念化します。
ビジネスシーン、特に事業戦略や事業計画、提案書作成などの現場では「2」が欠かせません。
「2」の例としてはマーケットセグメンテーションや市場における星取表、顧客の課題や価値観の変化とそれに伴うベンダーやメーカーへの期待感の変化との関係、参入障壁と市場規模の関係、顧客との関係が事業運営に及ぼす影響など、挙げるときりがありません。
「1」として描かれた絵と「2」として描かれた絵を比較すれば、両者の違いに気付くはずです。
- 叙情的な「1」に対し「2」は論理的
- 表面的な「1」に対し「2」は構造的
- 煩雑で無秩序な印象の「1」に対し「2」はシンプルで秩序がある
- 文字が小さく文字数が多い「1」に対し「2」は文字が大きく文字数が少ない
- 「伝える」ことが狙いの「1」に対し「2」は「考えさせる」ことが狙い
私はいま、コンサルタントとして「2」を武器に戦っています。そして、この武器を磨き上げることに、日々、躍起になっています。なぜなら、ビジネスを大きく動かそうとすると「2」は欠かせないからです。しかも「2」をピカピカに磨き上げているビジネスマンはほとんどいないので、この優位性は明らかです。
皆さんは、まずは「1」と「2」の違いをはっきりと意識することから始めればいいと思います。「正解のない問題を解くための力」というブログは、そんな皆さんを後押しするためにあります。
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概念化の達人は「だれが、いつ、どんな発言をしたのか」の記憶力がスゴイ
「すごい記憶力ですね。2カ月前の会議で、確かに加藤本部長はそういう発言をしていました」
いつからか、私はこんな誉め言葉をいただくようになりました。
ところが実を言うと、私は記憶力がいいほうではありません。最近の役者さんや歌い手さんの名前はまったく覚えられず、家内に本気で心配されています。
そんな私ですが、仕事上で「だれが、いつ、どんな発言をしたか」に関しては、別人のようは記憶力を発揮します。
なにも、自慢したくてこんな話をしているわけではありません。
実は、この記憶力は、概念化力と深く結びついているのです。
説明が少し遠回りしますが、まずは私の昔話を聞いてください。
私が大学を卒業して自動車メーカーの設計部門に就職したときのことです。そこには「引き出しおじさん」の異名を持つ機構設計リーダーのA氏がいました。彼にアドバイスを求めると、返ってくる答えはいつもこんな調子でした。
「あれがこうだったから… 〇〇さんは確かこう言ったはずで… そうなると選択肢はふたつあって… わかった、君たちの狙いが△△だとしたら、まずはⅩⅩしてみるといいよ」
席にどっかと座り、人差し指を上下左右に動かしながら宙を見つめて考えるその姿は、とても印象的でした。
その様子が、頭の中の引き出しをひとつひとつ開けているように映るので、私たちは陰で「引き出しおじさん」と呼ぶようになったわけです。
最近になって、私はこの光景がもつ重大な意味合いを理解しました。彼はきっと、概念化の達人だったのです。
いろんな出来事を頭の中でいったん要素分解し、それらを概念モデルに再構築していたに違いありません。引き出しをひとつひとつ開けるがごとく、でき上った概念モデルをさまざまな角度から眺め、それらの関係性から論理を導き出していたのです。
「リンク機構に問題ありと発言するとすれば、それは上野さんをおいて他にはいない」
「これまでの議論の流れでは、誰もリンク機構に問題があるとは考えていないから、きっと参加者の大半はそれに意義を唱えるはずだ」
「ところが、上野さんを信頼している中村部長が、上野さんの意見を頭ごなしに否定するはずがない。きっと試験のやり直しを命じるだろう」
「ということは、私たちが現時点であわてて資材発注したところで意味はない。むしろ再試験の結果を待ってから発注するほうがいいくらいだ」
「そうだ、次の会議までに、リンク機構の製造リードタイムを調べておこう」
A氏の頭の中では、概念モデルを相手に、こんなロジックが展開されていたに違いありません。
さて、そろそろ本題に戻りましょう。
実はA氏も「だれが、いつ、どんな発言をしたか」の記憶力が抜群でした。記憶を辿るとき、頭の中の概念モデルを改めて眺め直し、引き出しをひとつひとつ開けるように思い出すことができたからだと思います。
実は私にも、それに似た感覚があります。
頭の中にいったん概念モデルができあがると、他人のアイディアや新たな分析結果といった外部からのインプット情報を、概念モデルとのギャップで具体的に理解することができます。そのギャップを、新たなパーツとして概念モデルに組み込むことだってできます。これを繰り返すことで、概念モデルはグングン成熟していきます。
そして、成熟した概念モデルを、いつでも順繰りに辿る術を身に付けることで「だれが、いつ、どんな発言をしたか」という記憶は画像として浮かび上がるようになるわけです。
「あの人は切れ者だ」とはよく耳にするセリフですが、切れ者というのは知識が豊富とか、英語がペラペラだとか、計算が早いとかとは違います。複雑な議論をシンプルに整理し、欠けているパーツを指摘し、本質を突くひと言で議論を高みへ導くことのできる人のことです。
概念化の達人であるA氏はまさにそんな人でした。
私はまだまだA氏のようにはいきませんが、それでもA氏のような概念化の達人になることを目指しています。「だれが、いつ、どんな発言をしたか」の記憶力は、そのバロメーターのひとつです。
ところが、会話の中で概念モデルを思い描くのは容易なことではありません。
そこで、こんなときに便利な着眼点を5つほど紹介しましょう。
・ さまざまな事実の因果関係
・ 場を支配している空気や理論
・ これまでの議論の流れ、影響力のあった事実や予測
・ 関係者の人間関係や利害関係
・ 登場人物の専門性、問題意識や価値観
これらの着眼点に立ち、以前に説明したようにツリー型、マトリックス型、フロー型を意識し、頭の中をモデル化する訓練からまずは始めてみてください。
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