正解のない問題を解くための力

正解のない問題を解く力=「概念化力」を育んでいく上でのサプリメント的なブログです

空転し続ける議論を前に進めるためのスキルとは

ビジネスの現場では、ときに結論の出ない議論が延々と繰り返される場面に出くわします。

こうした議論の特徴は、毎回、少しずつ違う着眼点から意見が出され、これまでの議論がなかったかのように話が堂々巡りする点にあります。

 

その原因は、以下の3つです。

   参加者の間で全体像が共有できていない

   前回の議論の結果が、誰もが理解しやすい(=構造化された)形で共有できていない

   今回の議論を進める上で効果的な枠組みが準備されていない

 

全体像を共有することの重要性については以前言及したので、今回はそれ以外の2つについて話をしましょう。

 

そもそも会議では、様々な着眼点からそれぞれの意見が出されます。

そして、さも分かったような顔で聞いている参加者がきちんと内容を理解しているかと言えば、実はそうでもありません。多くの人はそこでの議論をきちんと整理して記憶していないのです。そして、次の会議に出席したときには、いくつかの重要なキーワードを除いて、大半の内容を忘れてしまっています。

 

では、どうすればいいのでしょうか。

こうした事態を避けるために重要になるのが、ディスカッションマテリアルの作成です。ディスカッションマテリアルは、前回の議論を整理(構造化)して全体像と関連付けてまとめることで、参加者の記憶を定着させるのです。

またディスカッションマテリアルは、考え方の枠組みを提案することで、前回の議論を引き継ぐだけではなく、議論を活性化させる役割を果たします。

 

ディスカッションマテリアルは「共通認識」と「考え方の枠組み」という2つの要素で構成され、この両者は何らかのつながりをもっています。ときには参加者への「問いかけ」が含まれることもあります。議論を前に進める力をもつディスカッションマテリアルは、全体像と同様に、構造化する力のある人しか作成できません。

多くの場合、ディスカッションマテリアルを作成するのはファシリテーターの仕事です。ゆえに、会議を成功させたいなら、ファシリテーターの選定は極めて重要です。ファシリテーターは会議運営を兼任することが多いですが、時には議長とは別に専任で任命することもあります。

 

一例ではありますが、ファシリテーターは以下のような発言で会議をリードします。

 

   前回は、全体像のこのあたりを議論しました

   これまでの流れと今後の進め方をフロー図で表現するとこのようになります

   議論の内容を整理するとこのようなキーワードが重要であり、それぞれこのような関係がありました

   これらの現状にはこのような理由があり、その真の原因は○○であした。これに対して△△の施策が提案されました

   今回は、△△を実行に移すために乗り越えなければならない障壁を洗い出しましょう

   障壁は、AF6個の軸で評価しますが、議論の中では軸の追加や修正も行いたいと思います

   今回の議論を受けて、次回までにこのような枠組みの内容(=コンテンツ)をすべて埋めておいてください

 

たいていの人はゼロから考えるのは苦手ですが、考え方の枠組みを与えられると、具体的な意見を述べ始めます。

なお、議論の場では筋の通らない意見も出ますが、それをそのまま放置すると、議論の内容を構造化する際に苦労することになります。ファシリテーターは議論の最中も、参加者の意見を構造的に捉え、筋の通らない意見に対してはその場で質問するなり、追加説明を促すなり、ときに意見を否定するなりしなければなりません。

 

このように、ディスカッションマテリアルの作成とファシリテーターの選定は、会議を成功させる上で重要なカギとなるのです。

 

以前に「頭の中を構造化すれば、判断力が身に付く」で使用した例を思い出してください。

あのときは、「使用目的」と「年齢層」を軸にとったマトリックスを作成したことで共通認識が生まれ、議論が深まったのでした。このマトリックスこそ、代表的なディスカッションマテリアルと言えます。

 

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