正解のない問題を解くための力

正解のない問題を解く力=「概念化力」を育んでいく上でのサプリメント的なブログです

目標は”決める”のではなく”決まる”ものであり、目標達成の手段は”積み上がる”のではなく”積み上げる”ものである(1)

今回は、目標設定について考えましょう。

 

残念ながら、目標設定がうまくいっている組織を私はあまり見かけません。目標設定はいまだに関心の高いテーマのひとつですが、それは、うまくいっていないことを自覚している人が多いことの現れでしょう。

 

目標設定で議論になるポイントは、いつも同じです。

すなわち「現状ありきで目標を設定する」か、それとも「目標を設定してからそれを実現するための手段を練る」かです。

 

「現状ありきで目標設定する」とは、現在の自分たちの実力から推し量り「このくらいなら実現可能だろう」と思える目標を設定することです。このようにはっきり言葉にされると「いやいや、そんなことはない」と反論したくなる気持ちもわかりますが、それは、皆さんが無意識のうちにそうしてしまっているからです。

 

これに対して「目標を設定してからそれを実現するための手段を練る」とは、最初に目標を決めてから「目標を達成するにはこの程度のことをやっていたのではダメだ」「ここまでやれば目標を達成できるはずだ」と、目標を達成できると思えるまで目標達成の手段を積み上げることです。

この背景には「目標は目的を実現するための管理指標であり、社内外の事情(=自分たちの置かれた立場)から半ば自動的に決まるものだ」という考え方があります。

 

私は、目的は意思を持って決めるものだと考えていますが、目的が決まれば、目標は半ば自動的に決まるものだと考えています。たいていの場合、そこに、自分たちの意思が入る余地はありません。「私は意思を持って目標設定している」と主張する方がいらっしゃるのも理解していますが、それはおそらく「意思」ではなく、知らず知らずのうちに自分たちの「都合」で目標設定しているだけです。

 

前者の「現状ありきで目標設定する」というやり方を「ボトムアップ」、後者の「目標を設定してからそれを実現するための手段を練る」というやり方を「トップダウン」と言い換えても構いません。

 

「日本企業では、かつてボトムアップ型の目標設定が優勢だったが、グローバル競争に巻き込まれる中で、徐々にトップダウン型が標準になりつつある」

 

このように感じている人は多いかもしれません。

しかし、私には、日本企業の多くがボトムアップ体質を色濃く残したまま、表面上はトップダウンを装っているだけのように見えます。

現場重視の企業文化が残っていて、トップダウンに移行しきれていないのです。

 

ここまでの書きっぷりから御察しの通り、私は、この状況を憂いているひとりです。

現場重視を否定するわけではありませんが、現場力は目標達成に向けてのものであり、目標設定に関しては、目標を設定してからそれを実現するために手段を練る(トップダウン)というやり方のほうが本来の姿だと信じているからです。

 

もう少し噛み砕いてお話ししましょう。

 

そもそも「目的」と「目標」とは何が違うのでしょう。

端的に言えば、目的とは目指す状況であり、目標とは目的の状況を表わす目印(=管理指標)です。目標は通常、誰もがぶれなく識別できるように、数値や「○か×か」などで表現されます。一方、目的はときとして曖昧で、人によって受け取り方が異なるものです。

 

本来、「目標を達成したのに目的を実現できなかった」はあってはなりません。目的と目標の整合性を取っておく必要があるのです。

ビジネスを小手先で何とかしようとする人は、しばしば、目的をそのままにしておいて目標だけ下げます。これでは本末転倒です。

逆に言えば、目標達成が難しければ、目的も変更すれば済む話です。しかし、目的は最後に行きつくところだけに、目的の変更はそう簡単には受け入れられません。組織のトップである経営者にとってはなおさらです。

現場の状況を見る限り目標は達成できそうもない。なのに、経営陣はそれを受け入れようとしない。その狭間で、目標だけが下方修正され、目的と目標の整合性は失われます。

 

目標を下方修正する組織はよくありますし、必ずしも悪いことではありません。しかし、目的と目標は必ずセットでなければならないのです。

 

「目標は目的によって決まる」、このことがわかると、目標設定はトップダウンで行うべきであることは明らかです。

目的を決めるのは、組織の代表者たるトップだからです。ボトムアップで目的は決められません。

 

ちなみに、トップは以下のような様々な外圧や内圧を考慮して目的を決めているはずです。

 

              [目的に影響を与える外圧の例(5Forces)]

 

   競合からの圧力

   顧客からの圧力

   ビジネスパートナーからの圧力

   新規参入の圧力

   代替品の圧力

 

              [目的に影響を与える内圧の例]

 

   市場で目指すポジション

   成長への圧力

   財務状況

   顧客満足度の目標

   株主の要求

   株主の投資意欲への影響

   他社との競合関係

 

つまり、トップとて、単なる独断で目的を決定できるわけではなく、そこには様々の外圧や内圧が関わっているということです。組織の立ち位置が強く影響してくるわけです。

 

これらのことを総合して、私は冒頭で書いたように「目標は社内外の事情(=自分たちの置かれた立場)から半ば自動的に決まるものだ」という考えに至ったわけです。

 

しかし、トップダウンで設定された目標は、現場からしばしば、非現実的に思えるものです。この目標を、現場はどのように達成すればいいのでしょうか。

その答えは、次回、考えましょう。

 

 

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