正解のない問題を解くための力

正解のない問題を解く力=「概念化力」を育んでいく上でのサプリメント的なブログです

具体と概念の両面から考えることが、結果につながる

対象に対する理解を深める上で、物事を軸の両面から捉えることは有効です。

 

   トップダウン vs ボトムアップ

   先進 vs 実用

   能動 vs 受動

 

その際、数ある軸の中から最も適したものを選ぶことになりますが、正解のない問題を解く上で特に重要なのが「具体 vs 概念」の両面から考えることです。

 

しかし、具体と概念は連続していないため、たいていの人は具体的にばかり考え、概念的に考えられる人は概念から抜け出せません。具体と概念の間にはカオスの谷が広がっているのです。

実際、知り合いの研究者曰く、日本人のほとんどは具体的にばかり考え、概念的に考えられる人は少数派、そしてごくわずかな人が具体と概念の両面から考えられるそうです。

 

具体的に考える人は、目の前の具体的な事象には目が行き、細かいことに気が付きます。そのため、現場の改善活動などが得意です。しかし、全体像があまり見えていないため、刻々と、ランダムに変化する状況のもとでは右往左往しがちで、革新的なテーマや大きな目標に取り組むのが苦手です。

 

一方、概念的に考える人は、目の前の具体的な事象を抽象化してとらえること、全体像を把握することは得意です。

そのため、既存の理論を組み合わせて問題解決の方針を立てることができます。しかし、現場(=具体的な事象や具体的に考える人たち)に目を向けないので、現場の実情と問題解決の方針のギャップに気付きません。その結果、「あの人は現場を分かっていない」「きれいごとだけじゃビジネスは進まない」などと現場(=概念的に考えることのできない人たち)に反発され、意見が採り入れられません。頭はいいものの、現場が付いてこないリーダーはこの典型です。

 

「結果を出す」には、具体と概念の両面から考えることが必須です。具体と概念の両面から考えられれば、以下のようなことが見えてくるはずです。

 

   目の前の出来事は、大きなルールの下で動いている

   個々の問題は実は相互に関連し合っている

   根本原因はいくつかしかない

   目の前の問題は氷山の一角でしかないが、全体像をとらえるヒントになる

   全体を動かしているメカニズムがある

 

そして、具体的な例えを駆使して、これらの状況と、問題解決の手段をメンバーにわかりやすく説明することで、メンバーを概念的に考えられるようにします。こうすることで、チームが結果を出せるようにするのです。

 

例を挙げて、理解を深めていただくことにしましょう。

 

そのとき、私たちは改善活動の最中でした。業績は急激に悪化しており、抜本的な改革が求められていました。

 

A       「大型プロジェクトの指標悪化にはお客様が関係しています」

B       「お客様の度重なる仕様変更で、工数の悪化が止まりません」

          「どのプロジェクトも…ですか?」

A       「大型プロジェクトです。大切なお客様ばかりで、無碍に突き放すわけにもいきません」

B       「プロジェクトマネージャには改善するように指示を出していますが、改善が見られ          ません」

C       「仕様管理を厳しくするしかないです。契約書にも、仕様変更は両者の協議で決めると          謳っているわけですし。追加費用の見積りのことも書いてあります」

A       「仕様情報をエクセルで共有し、仕様変更を受け入れるには役員の承認が必要なルール          にしましょう。仕様変更の影響度合いも明記させます」

 

私は首をひねりました。仕様変更は、大小合わせれば、お客様との打ち合わせの度に発生しているはず、はたしてそんな運用が可能なのかと疑問を感じたのです。しかも、変更要求を却下するとなると、お客様に納得していただかなくてはなりません。「大切」なお客様にどうやって平和的に納得いただけるというのか、想像できませんでした。

 

          「暫定的に蛇口を閉めるのはいいと思いますが、恒久的にはどうされるおつもりです              か?」

A       「…」

          「プロジェクトマネージャは、なぜ仕様変更を受け入れざるを得ないのでしょうか?」

B       「お客様とのこれまでの付き合い方を変えないと、仕様変更は減少しないですね」

A       「拒否し続けると、そのうちにあきらめるようになるのではないですか?」

B       「そのときは、うちには仕事がこなくなっています」

C       「プロジェクトの立ち上げ時点で『握り』が足りないと思います。提案の際の要求を鵜          呑みにしていて、具体化に向けた議論をあまり行っていません。だから断り切れないと          いうのもあるはずです」

A       「以前は、仕様変更を受け入れるかわりに、ほかで便宜を図ってくれていたのですが、          今はお客様の状況も厳しいようで…」

 

こんな議論が暫く続いたわけですが、結論は理想的な方向に向かいました。

 

「当面の対策としては、仕様変更の蛇口を閉める」

「それと同時に、お客様の言いなりではなく、常日頃からの提案型アプローチでお客様のビジネスパートナーとしての立ち位置を目指す」

「プロジェクト立ち上げ前のフィジビリティスタディフェーズを提案内容に盛り込み、そこで仕様の曖昧さを解消する」

 

具体的な実施計画はこれからでしたが、当初の議論からは見違えるほどよくなったと思いませんか?

 

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