正解のない問題を解くための力

正解のない問題を解く力=「概念化力」を育んでいく上でのサプリメント的なブログです

立場の違いを、対立ではなく価値につなげる

コンサルタントをやっていると、組織内のイザコザに巻き込まれることもあります。例えば、営業部門と開発部門の以下のような対立です。

 

営業       「うちのお客様は、この商品では満足しない!」

開発       「うちの商品は、技術的に他社に負けてない!」

 

この手のイザコザの根底にあるのは、多くの場合、両者の「立ち位置の違い」です。

議論する相手がみな、同じ立ち位置なら、それはそれで困ったことでしょう。組織の意見は偏り、歯止めが効かなくなるからです。本来、「立ち位置の違い」は価値の源泉であり、歓迎すべきことです。しかし多くの組織では、これがしばしば組織内の対立につながっています。

 

理由は「全体像を共有できていない」ことにあります。

全体像を共有できれば「相手は自分と敵対しているわけではなく、立場が違うから着眼点が違うのだ」ということに気付くはずです。立ち位置の違いに気付けば、相手が主張する理由やその背景をおもんばかりながら、それに調和できるように自分の考えを伝えられるようになります。そうすれば、互いに補い合えるので、その後の議論もうまくいくはずです。

 

では、どうすれば全体像を共有できるでしょうか。

そもそも「立ち位置の違い」に気付けない理由は、多くの人がとかく目の前にある現実に影響されてしまうからです。現実に釘付けになってしまうと、全体像まで意識が及ばなくなります。現実の世界は具体的で説得力があるものの、それが世界のすべてだと思うのは間違いです。

だとすれば、全体像を共有するには、各人が目の前の現実をまずはシャットアウトしてかかるしかありません。すなわち、自分を主張するのもほどほどに他人の話(=他の人の目の前の現実)に耳を傾け、まずは全体像を描くように心がけるのです。

全体像を共有できれば、それを徐々に具体化していけばいいわけです。

 

ここでのポイントは「他人の話を聞く」だけではなく、自分のまわりの現実と他人の話をうまく結びつけて辻褄の合う全体像を描くことです。義務教育で教わった「他人の意見には耳を傾けましょう」とはひと味違います。

 

このようなやり方は、ものごとが複雑に絡み合うビジネスの世界では欠かせません。このように「全体像から段階的に具体化していく」という思考方法を、ここでは「段階的思考」と呼ぶことにしましょう。

 

段階的思考では、全体像を大雑把につかむことから始めます。

数百のピースが散らばった状態のジグソーパズルはさも難解そうに見えます。しかし、もし完成した絵のイメージがつかめれば格段に解きやすくなるはずです。近年のビジネスの世界は、まさにこのジグソーパズルのようだと思いませんか。

ヒントは自分のまわりの現実と、他の立ち位置にいる他人からの情報です。

 

参加者の誰かが、段階的思考で議論をファシリテーションできれば、これまではけんか別れしていた会議も掛け替えのない価値を創出するようになるはずです。

 

先ほどの営業部門と開発部門の対立の先を見ていきましょう。

 

          「話がどうも食い違っていますね」

営業       「…」

技術       「…」

          「営業さんと開発さんの間ではよくあることですよ、お二人とも嘘は言っていません。          置かれている立場の違いから、見えている世界や伝わってくる情報が違うだけです。              ビジネスを伸ばそうと考えるなら、この食い違いはむしろ大切です」

営業       「…」

開発       「…」

          「お互いの情報の関係性を少し高い位置から整理してみませんか」

営業       「そうですね、私はお客様の意見を伝えただけです」

          「お客様はなぜ満足していないのでしょうか? 技術は最高なのですよね」

技術       「…」

          「お客様は、機能や性能の良さだけでは満足しないのではないですか? Good enough          (今のままで十分だ)といって、最近、よくある話です」

技術       「その話は私も耳にしたことがありますが…うちのお客様は最先端を期待しています」

営業       「確かに最先端に目がないお客様もいますが、昔のように全員がそうではないです」

          「ほほう、お客様の期待が2つに分かれてきたというわけですね」

 

こんな会話の中から生まれた答えがこうです。

 

「お客様の期待を軸に、市場を分けて考えよう」

「それぞれの市場を分析した後に、自分たちのターゲットを決めよう」

「この議論を経営陣まで持ち上げて、組織としての方針を明確にしよう」

 

どうです? こんな議論なら、価値はありませんか?

 

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