正解のない問題を解くための力

正解のない問題を解く力=「概念化力」を育んでいく上でのサプリメント的なブログです

検討すべきことを検討する、まずはそこから始めなさい

正解のない問題に直面したときによく見るのが「まずは手の付くところから始める」タイプの人です。ルーチンワークならいざ知らず、正解のない問題を解く場合、このやり方ではほとんどが失敗します。

 

たしかに、手の付くところから始めれば、さも検討が進んでいるような錯覚に陥り、不安にならずにすみます。しかし、このやり方には様々なリスクがあります。

 

手の付くところとはイメージしやすいところです。過去の経験などからアイディアも浮かびます。すると多くの人は、ひとつのイメージやアイディアに心を奪われてしまい、他のことを考えなくなります。

こころがこういったイメージやアイディアはたいてい過去の焼き直しで、新しさに欠けます。それだけで目的が達成されることは少ないでしょう。

 

だから私はいつもこう警告します。

 

「それでは場当たり的になりますよ。いきなり細かなところに深入りするのではなく、全体を俯瞰するところからはじめましょう」

「大切なのは『何を検討すべきか』から検討を開始することです」

 

まずは「なぜ検討しなければいけないのか」、つまり検討の裏側にある背景に目を向けます。そうすれば、達成すべきゴールや検討すべきテーマは自ずと浮かび上がってきます。しかも、時期的には現実にどっぷりと浸る前、つまり頭がまだクリアな検討の初期段階が絶好のタイミングなのです。

 

もしチームで検討しているのであれば、メンバー全員で「なぜ検討するのか」「何を検討すればいいのか」と議論することから始めるべきです。効率化がからだに染みついている私たちは、早々に「じゃ手分けしよう」と分担作業をはじめがちですが、それはまだ先の話です。さもなければ、検討の成果物はトンチンカンなものになってしまいます。

 

例を挙げましょう。

 

クライアント企業の担当者たちと提案書を作成していたときのことです。彼らは担当箇所を割り振り、分担作業をしていました。

提案リーダーは、各人が持ち寄った提案書の「各部分」を一通り眺めたてこう言いました。

 

「これでたたき台ができた。これを組み合わせて、不十分なところを補えばいいよ」

 

私は黙って見ていました。

 

彼らはそのあとも作業を続け、提案書は完成しました。しかし、出来上がった提案書からは「訴えかけたいこと」が伝わってきませんでした。提案書の肝となる「お客様のベネフィット」が一般論なら、自分たちの優位性も「使いまわし」的な印象のものでした。実現内容や実績アピールにも見るべきものはありませんでした。

 

情報がなかったわけではありません。提案前のお客様との打ち合わせでは、提案を依頼するに至った背景や避けては通れない制約条件なども伺うことができました。ぼんやりとはしていましたが実現したいことも説明してもらいました。

ところが、でき上がった提案書には、それらの情報はほとんど活かされていませんでした。所々で軽く触れられていた程度です。

 

しかもこの案件には競合他社がいました。それだけに、提案書にはお客様を惹きつけるストーリーが必要だったのです。

 

私は、「これでは勝てないな」と思い、口をはさむことにしました。提案書の内容を再考するきっかけを与えたかったからです。

 

「お客様の立場になって、一番魅力的なストーリーを考えてください。そうすれば、勝つために検討しなければいけないことがはっきりしてきますよ」

 

この例では、いきなり手分けして作業に突入したことが問題でした。

彼らの目線は各人の「提案経験」にありました。経験を寄せ集めれば提案書が完成すると考えたのも無理はありません。

それを見かねた私は「何を検討すべきかを考える」ところまで彼らを立ち戻らせるために「お客様の立場で考える」という新しい目線を提供しました。

このように、何を検討すべきかを考えるには、いったん目線を変える必要があります。

 

後日伺ったのですが、でき上がった提案書はお客様の心を捉えたらしいです。

何を検討すべきかを検討する作業は、概念化力の第一歩です。是非、やってみてください。

 

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